ペットショップの前を通ると、可愛い子犬や子猫の姿が目に止まり、ついつい立ち止まってしまいますよね。「この子達は売れ残ったらどうなるのだろう?」「売れ残った子を引き取りたい場合はどうすればいいのだろう」と気になったことはありませんか?
今回は専門の方からの話を交えながら、ペットショップの売れ残りの動物の行方や、世間で騒がれている「引き取り屋」の実態、殺処分を減らすために私達ができることをお話していきます。
売れ残った動物はどうなる?購入できるの?
ペットショップで売られている犬猫の中には、当然売れ残ってしまう子もいます。注目を浴びる可愛い子犬・子猫時代を過ぎてしまうと残念ながら買い手が減ってしまいます。
ペットショップ内で「売れ残り」と呼ばれ始めるのは、大体4ヶ月頃からです。病気が見つかったり、サイズが大きくなったりなど売れ残る理由は様々です。
売れ残った動物はすぐに殺処分されてしまうわけではなく、以下のような行方を辿ります。
- 値引きをされる
- 里親を募集する
- 引き取り屋に渡される
まず最初に行われるのは値引きです。
値段は10万円、5万円と下げられていき、中には100円まで生体価格を下げられてしまう動物もいるようです。
こちらはトイプードルに特化した情報サイトのため、トイプードルについても少しお話します。
トイプードルは人気な犬種なので値下げをされても10万円以下になることは少ないようです。
しかし人気なだけあって、大量に販売するペットショップも少なくありません。見えないだけで売れ残っている数は実は多いのかもしれませんね。
そして中には売れ残りの動物を管理しきれなくなり、「引き取り屋」という団体に依頼をして動物を引き取ってもらう販売店もあるようです。
ペット界隈で頻繁に話題となる「引き取り屋」とはどのような団体なのか、実際の事件を元にご説明します。
「引き取り屋」の実態
「引き取り屋」とは、ペットショップから高い費用をもらって、売れ残ってしまった犬猫を引き取る団体のことをいいます。
一見何の問題もない団体のように思えますが、引き取り屋はペットの界隈では「殺処分代行」と呼ばれています。
なぜなら高いお金を受け取っても、引き取った動物は狭いケージに入れられ、ご飯やお水は用意されず、病気になっても治療せず、死ぬまで放置をする悪質な団体だからです。
実際に起きた引き取り屋の事件の記録をご紹介します。
宇都宮市では10月31日、鬼怒川河川敷で40匹を超える小型犬の死骸が見つかっていた。11月5日にも約20キロ離れた同県那珂川町の山林で27匹の死骸、8匹の生きた犬が発見されており、県警が捜査を進めていた最中だった。
捨てられていたのは、いずれもトイプードルやミニチュアダックスフントといった愛犬家に人気の小型犬。爪は伸び、一部はフィラリアに感染するなど劣悪な状態で飼育されていたとみられ、悪質なブリーダー(繁殖業者)の関与が疑われた。
裏付け捜査を進めた県警は18日、廃棄物処理法違反や動物愛護法違反の容疑などで、出頭した無職、木村正樹容疑者(39)=同県那須塩原市=を逮捕。県内外のペットショップで働いていた経験があり、「愛知県内のブリーダーの知人から犬を引き取ってほしいと頼まれた」などと説明した。
引用:産経新聞「「商品(犬)ダブつき、間引き」犬大量投棄事件…「100万円で引き取り、死んだので捨てた」逮捕された引き取り業者が供述するペット業界の闇」
2012年に動物愛護法は改正され、殺処分の数を減らすために各自治体は、ペット販売店や繁殖業者からの犬猫の引き取りを断れるようになりました。
しかし動物を引き取ってくれる場所をなくした販売店や繁殖業者は、次第に引き取り屋を利用するようになり、引き取り屋というビジネスが浸透していきました。
飼育をせず、ただ動物を放置して衰弱死させる引き取り屋は、殺処分と変わりないですよね。
激安ペットショップでの体験談
値段を安くして動物を売っているペットショップの裏側では、ペット業界の闇を凝縮したような光景が広がっています。
今では有名なトイプードル専門店でブリーダーとして働いているAさんより、当時働いていたペットショップについて詳しくお話を聞きました。
安くペットが売り買いされる背景や、売れ残ってしまった子たちがどうなるのか、実態を探ります。
インタビュー、よろしくおねがいします!
ペットを安く買うことで、起こる問題ってなにがあるんでしょうか?
僕が昔働いていたペットショップでの話をするね。
品質管理センターというところで子犬と子猫を管理していたんだ。数人のスタッフと獣医師がダンボールに入っている子猫、子犬にただワクチン打ったり、駆虫薬で駆虫しているだけ。あとは個別のデータ入力をしたり。
抱っこすることもない、愛情を注ぐこともない。
スタッフも少ないし、飼育費用も少ないしで、1匹1匹を大事に見て上げることが出来なかった。
安く買う人が増えると、お金をかけられずに飼育される動物が増えてしまうんですね...。
他にも問題はありましたか?
基本的に病院に行かないんだよ。具合が悪い子がいても「お金がかかるから」と病院に行かない。
僕は耐えられなかったので、エリアマネージャーの許可なしで病院に連れていってたよ。笑
ジステンパーやパルボウイルスなどの、危険な感染症も流行ったことがある。
病気になった子は店舗の裏側にあるダンボールに入れられて、死ぬまで放置される。そして定期的に謎の団体に遺体をまとめて回収してもらっていた。
病気になった子さえも、「お金がない」という理由で治療してもらえないんですね...
店頭に出しても最終的に売れ残ってしまった子はどうなるのでしょうか?やっぱり殺処分をされてしまうのでしょうか?
すぐに殺処分をされるわけではない。
値下げをされたり、他の店舗を回ったりしてできるだけ店舗にいる頭数を減らしていくよ。
ペットショップに行って、10万円以下の子がいたらなにか理由があって売れ残ってしまっている子かもしれないね。
そうなんですね...
「安いから買う」「売れ残りだから買う」というのはそもそも間違っていますね。
うん、今一度、動物を本当に育てられるのかじっくり考えてから買ってほしいね。
身近にあるペットショップの中には、このような悲惨な管理体制をとっているところがあります。
ではなぜそもそも安く動物を売っているペットショップはなくならないのでしょうか?
ペットショップがなくならない理由
原因①日本のペット業界の仕組み
フランスでは2024年から店舗での犬猫の販売が禁止されます。
また、スイスやドイツ、アメリカなど動物愛護に関する法律を厳しく制定している世界の国々はたくさんあります。
しかし日本はこれまで何度か動物愛護法が改正されてきたものの、ペットの流通はあまり変わっていません。
一般的にペット流通構造はこのようになっています。
- ブリーダーが子犬を繁殖
- せり業者に買い上げられオークションに出される
- ペットショップが安く仕入れて販売
- 消費者のもとに届く
どのような飼育環境であっても動物取扱業者の登録をしていればオークションを利用することができます。オークションは持ち込んだ動物の数だけ、利益があります。
そのため悪質なブリーダーはお金のかかっていない環境で次々と繁殖をして、お金儲けをします。
また消費者の元に届くまでかなり長い道のりがあるので、途中で亡くなってしまう子もいます。
このように日本はペット後進国といわれるほど、ペット流通の仕組みが未だに変わっていません。
原因②犬猫を安く買いたい人が多いこと
日本は毎年70〜80万匹の犬猫が新規で購入されているほど、ペットの需要が高いです。
最近では「ペットショップの売れ残り」という言葉が浸透し、売れ残った動物を新規で購入しようと考えている人がいます。
しかし、「ペットショップ 売れ残り」と検索すると、「引き取りたい」「値引き」など"安い"を連想する言葉がいくつか出てきます。
売れ残りの動物を探す人の中には「安くペットを購入したい」と考えている人がいると思われます。
しかし、安く動物を買いたい人が増えてしまうと、お金をかけずに劣悪な環境で、動物の乱雑な交配をする繁殖者が増えてしまいます。
ペットショップがなくならない理由は、消費者の「安く動物を買いたい」という気持ちを上手く利用したペット業界の仕組みがあるからです。
ペットショップやブリーダーが完全に悪い?
ペットショップから犬猫を迎えることは悪いことなのでしょうか?
SNS上ではペットの店頭販売に反対し、ペットショップの廃止やペットショップで動物を買わないよう呼びかける人もいます。
安く動物を購入することで、乱雑な飼育管理をする販売店が増えるのは許されることではありません。
しかしペットショップの犬猫と保護犬猫では命の重さに差がないことも事実です。保護犬猫だけでなく、ペットショップにいる子たちも温かい家族に迎えられたいのです。
- 一人暮らしで寂しいからペットを飼いたい
- 先住犬が亡くなってしまって寂しいから飼いたい
- このワンちゃんを一生涯幸せにしたい!
このような純粋な気持ちで、ペットショップから動物を迎えるのは全く悪いことではありません。迎えてから一生涯幸せに暮らせるのであれば、動物たちにとってはこれ以上ない幸せです。
殺処分ゼロへの近道は販売店を廃止することではなく、飼い主様自身ペットへの向き合い方を変えることです。
ペットの殺処分を無くすには?
殺処分を減らすためには、ペットショップやブリーダー側のみならず、飼い主側、行政側も問題に目を向け、ペットの取り扱いを改善していかなければなりません。
では私たちが動物のためにできることは例えばどのようなことがあるでしょうか?プードルのいるくらし編集部の視点で考えてみました。
- 消費者側
自分がどれくらいペットの飼育ができるか、万が一なにかがあった時に預けられる・頼れる人は周りにいるか、を考えてから動物を購入する。ペットを本当に一生涯幸せに出来る自身がある人だけが買う。流行りに乗らず、衝動買いもしない。 - 販売業者側
ペットに慣れていない新規購入者にはペットのことを丁寧に説明し、飼い主としてのレベルをあげる。飼い主に何かあった場合は、動物を引き取ることが出来る環境を作っておく。 - 行政側
動物に対する責任感が生まれるよう、犬猫を買った時は飼い主の情報が行政へ登録されるしくみをつくる。飼育放棄の防止にもなる。
しかしペットに対する思いは人それぞれあるので、上記でお話した方法が正しいとは一概には言えません。
年々、日本での動物殺処分の数は減少傾向にありますが、一方「引き取り屋の増加」など新たな問題が浮き彫りとなりました。
ペットショップで売れ残った動物の行方や引き取り屋の実態、日本のペット流通のしくみを読んで実際にどう思われましたか?また問題をもっと減らすにはどうしたら良いと思いますか?
ぜひ記事下部のコメントで教えて下さい。
最後に
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
私自身、記事を作成する前は無知であり、「動物側の視点」に立つことが出来ていませんでした。SNS上の動物販売に関する論争を見るたびに違和感を覚えるばかりで、意見をなかなか言葉に出来ませんでした。
ですが、普段動物と接する機会の多い方々からお話を聞き、やっとこのように言語化して1つの記事に仕上げられました。
結局の所、動物にとっての幸せとはなんなのか、人間と同じように喋るわけではないのでわかりません。しかし、私の周りにいる、優しい飼い主さんに出会ったワンちゃんやネコちゃんはなんだかとっても幸せそうです。
「絶対に一生涯離れることはない」という飼い主さんの強い意思が犬猫を安心させているのかもしれませんね。このような光景が増えることを、願っています。
飼うと決めたなら責任と覚悟をもって、一生涯その子を幸せに、大切にしてあげてください。