ミックス犬の人気は年々増えており、ミックス犬を飼う人もよく見かけますよね。「かわいい」「唯一無二のルックス」などと親しまれていますが、ペットショップで売られているミックス犬が全てではありません。

かわいいミックス犬の裏には、失敗作と呼ばれ奇形を持って産まれたかわいそうなミックス犬もたくさんいます。今回は、金儲け主義の悪質なブリーダーでの体験談とともにミックス犬のかわいそうな実態やミックス犬を飼うデメリットなどをご紹介します。

注意)この記事にはミックス犬やその飼い主様を否定する意図はありません。ミックス犬が続々と生み出される背景には悪質なブリーダーやかわいそうなワンちゃんがたくさんいる事実を多くの方に知ってほしいという思いで作成しました。

人気急上昇中のミックス犬とは

ミックス犬とは、犬種が異なる母犬と父犬の間に生まれた犬のことを指します。ハーフ犬やデザイン犬とも呼ばれるミックス犬ですが、雑種犬とは少し違った意味で使われることが多いです。

ミックス犬と雑種犬の違いは、親犬が純血種か純血種でないかという点にあります。一般的に親犬が純血種同士の子犬をミックス犬と呼び、3種類以上の血統が掛け合わされた犬を雑種と呼びます。

ミックス犬の人気が年々増えていることをみなさんご存知ですか?下のグラフは「ミックス犬」「デザイン犬」「ハーフ犬」の検索回数の推移を表したグラフです。

3年間で「ミックス犬」の人気が約3倍になっていることがわかるよね!

2018年から2021年の間にミックス犬を検索する人が約3倍に増えていることがわかりますね。人気が上がりミックス犬を買う人が増えたことで、ますます人気が増えているのかもしれませんね。

ミックス犬が気持ち悪い・かわいそうと言われる理由

ミックス犬の人気が上昇するに連れて、ミックス犬に対して悪い印象を持つ人も増えています。この理由の一つに、ミックス犬の人気に乗じて金儲けをする悪質なブリーダーやペットショップの存在があります。

本来、犬の交配や出産はとても難しいことです。犬も人間も同じように妊娠をしたら何度も病院へ通い、お母さんは命を掛けて出産します。さらに犬の繁殖には膨大なお金や人手だけでなく、適切な掛け合わせを見抜く経験や知識も必要です。

健康的で可愛いワンちゃんを繁殖できるのはほんの一部の優秀なブリーダーに限られます。「優秀なブリーダーには敵わない…今までの繁殖方法ではお金がかかりすぎる…」と考えたブリーダーや大手ペットショップがミックス犬の人気を作り、劣悪な繁殖環境でお金儲けをする悪質な子犬工場が増えたのです。

悪質なブリーダーや気持ち悪い子犬工場の実態を知った人が「ミックス犬はかわいそう…」と厳しい評価を受けてしまいます。それはどういうことなのでしょうか?

ブサイクでは済まない奇形に繋がる掛け合わせ

人工的に交配をさせるので、実はどのような掛け合わせでも交配をさせることができます。しかし交配する際、次のような掛け合わせはワンちゃんの奇形や命の危険につながります。

  • 体格差の大きい犬種の掛け合わせ
  • 犬の性質や特徴が大きく異なる
  • 骨格と体格のバランスが悪い掛け合わせ

母犬よりも父犬の方が体格が大きい場合、母犬の体が子犬の大きさに耐えられず、出産時に命を落としてしまったり、出産に辿り着いたとしても奇形になりやすいのです。また、特徴が大きく異なる掛け合わせは顎や体の部位、毛質など細かいところにズレが生じてしまい歯並びがガタガタになったり、体格に骨の太さが見合っていなかったり、扱いにくい毛質になったりします。

最低限のルールを守り、比較的相性の良い組み合わせで交配をしても想像とは違った容姿や特徴を持った子は一定数生まれてきます。そういったミックス犬たちが世間から「ブサイク」「失敗」「気持ち悪い」などといった厳しい評価を受けます。

世界で話題。ミックス犬の失敗例「ラブラドゥードゥル」

では実際、どのような前例があったのか見てみましょう。世界で話題となったミックス犬の失敗例「ラブラドゥードゥル問題」をご紹介します。

オーストラリアで王立盲導犬協会でブリーディングマネージャーとして勤務していたウォーリー・コンロン氏は、1989年にプードルとラブラドール・レトリーバーを交配させ、”犬アレルギーの出にくい盲導犬”として「ラブラドゥードル」を生み出しました。

ラブラドゥードルは、その可愛さや優しい性格から瞬く間に人気が上昇し、多くの金銭目当てのブリーダーが乱繁殖をはじめました。その結果、ほとんどの子犬は遺伝的疾患や精神に異常を抱えていると言われています。

「人生最大の後悔の1つである」
「パンドラの箱を開け、フランケンシュタインの怪物を解き放ってしまった」

引用byオーストラリア放送協会

コンロン氏本人がオーストラリアのラジオ番組でこのように言っています。すべてのラブラドゥードルが異常をきたしているわけではありませんが、プロのブリーダーであっても異なる犬種の掛け合わせには大きなリスクが伴います。

悪徳なミックス犬ブリーダーでの体験談

トイプードル専門のブリーダーとして独立したTさんから、過去に勤務した悪徳なブリーダーでの体験談をお聞きしました。この悪徳ブリーダーはミックス犬をデザイナー犬と称し、2021年現在も悲惨な環境で無計画な交配を続けています。具体的にどのような環境だったか、是非こちらの体験談をお読みください。

編集部

今やミックス犬のブリーダーとして有名な〇〇さんですが、どのような繁殖環境だったのでしょうか?

Tさん

そのブリーダーさんは山の広い土地に犬舎を置いていたから、施設自体は大きかった。でも圧倒的に犬の数が多すぎた。約500頭。大型犬から小型犬まで、元々豚小屋として使われていたケージにたくさん詰められていた。

小型犬ならまだしも、大型犬が一つのケージに何匹も入ると広々と寝るスペースがないから、固まって寝ていた。床はコンクリート。自分は見たことないけど、過去には朝寒くて亡くなってしまう子もいたらしい。強い大型犬もいたから、喧嘩もあるし、聞いた話によると共食いもあったらしい。

そんなことが起きてもつきっきりじゃないし、数が多すぎて、気づけないんだ。

施設は大きいものの、圧倒的なワンちゃんの数で十分な生活スペースを確保できていません。人間にとってコンクリートは掃除のしやすいものですが、ワンちゃんにとっては決して過ごしやすい環境ではありません。

表面上で起きていることにも気づくことができない飼育環境だったようです。

編集部

コンクリートの床は、従業員にとっては掃除しやすいかもしれませんが、犬にとっては固いし、冬は冷たいし、夏は熱いし、本当にかわいそうですね。

それに犬が共食いなんて…なぜ?ですよね。ご飯はどくらい与えていたのでしょうか?

Tさん

食事は1日1回。子犬は2、3回あげてたかな。朝あげたらそれで終わり。皿もなし、ケージにバーっとばらまくだけ。数が多いと、食事すらも満足に用意できない。食事をあげて、掃除をして終わり。従業員の仕事はそれで終わりだった。

犬の数が多いのに従業員の数が少ないから目が行き届かない。掃除を手分けして500頭分やるとほぼ1日が終わってしまう。犬を飼育している、というよりただ体力仕事をこなしているという感じ。

こちらが犬舎でその方が実際にやった1日のお仕事。1日1回の食事と、長い掃除をして終わり。ワンちゃんたちに構う時間も触れ合う時間もなかったそうです。同じ従業員はそれに違和感を持つことはなく、ただ仕事をして帰る、というような感覚だったようです。

編集部

ご飯も十分に食べられないなんて本当にかわいそうです。

お散歩や運動はしていたのでしょうか?

Tさん

自分が働いていた期間で犬がケージから出たのは1回だけ。と言ってもドッグランもないから、ただ廊下を行き来するか、狭いスペースで走るだけ。すごく走りたかったのか、出した途端飛び出すように走って行った。

こんな生活をしていても犬は人間のことが好きみたいで、掃除をしにケージ入るとすごい勢いで寄ってくる。すごくうれしそうだった。それがかなり切なかった。

数が増えすぎた時は、何百頭を一気にトラックに詰め込んでどこかに連れて行った。どこに連れて行ったかはわからないけどね。

このような環境でも人間を疑うことなく、人間と遊びたがる姿を想像すると、とても切なくなりますね。

編集部

ご飯も食べられない。運動もできない。普通なら病気になりますよね?

病気になった犬はどうしていたのですか?

Tさん

病気になった子が集められる犬舎があった。週に1回獣医師がきて注射を打つだけの雑な治療を受けている。

ミックス犬もいた。選出された可愛いミックス犬は売れたが、見た目がよくわからなくなってしまった子は引き取られず売れ残り。相性がよくなさそうな犬種同士の掛け合わせをしていた。大型犬はあまり売れないのに、無駄に多く生ませていた。

頭数をこんなにも増やさなければ、もっと広いところでのびのびと育てられたのにね。

こちらが聞いた話の全てです。お客さんは店内の綺麗な部分を見て、バックヤードを見ることがないので、炎上でもしない限り売上には影響がありません。ということはこのような状態で販売を続けているブリーダーがまだまだ隠れています。

どうですか?ミックス犬に限った話ではないんです。目が行き届かないほど数を増やし、それのせいで自由が奪われ、最低限の生活も制限され、商売として要らなくなれば捨てる。「虐待」という分かりやすいことをしていなくてもこれは立派な悪質ブリーダーです。

こちらのブリーダーでは今でも「デザイン犬」という名前でミックス犬を販売し、このような環境で無計画な交配を続けています。

ミックス犬について知らなければいけないこと

ミックス犬は安い?隠されたかわいそうな理由

ミックス犬のメリットの一つとして「生体価格が安い」が挙げられます。

こちらは全国のブリーダーさんを紹介するサイトでの相場価格です。頭数の一番多いトイプードルとミックス犬を比べてみました。

平均価格最低価格最高価格
トイプードル42万10万170万
ミックス犬33万9万69万

このようにミックス犬は価格が全体的に安い傾向があります。同じ生き物でもこの差はなんでしょうか?

その理由の多くがワンちゃんに対してブリーダーが愛情を注がず、劣悪な環境で飼育をして、健康管理をするコストを極限まで抑えているから、が考えられます。

  • 飼育場所は身動きも取れないような狭い場所
  • お水は用意されていない
  • 病気や怪我は治さず放置、
  • 飼育環境の衛生面が整っていない

など、犬のことを全く考えずにブリーディングをしています。これはミックス犬の犬舎に限らず、なるべくコストを抑えながら犬を売りたいと考えている販売店ではよくあることのようです。

犬が生きるのにはもちろんある程度のコストと手間が必要です。そのため、生きるために必要なコストが異常に抑えられている場合、そこには必ず理由があります。人間にとっては「価格が安い」とメリットとして見られがちですが、元々何に使われるはずだった費用なのかを一度考えて見てください。

ミックス犬は病気に弱い?いいとこ取りだけではない?

  • 「ミックス犬は両親犬の良いとこ取りだから弱点を補える」
  • 「遺伝的疾患を発症するリスクが減る」

このようなことが言われることがありますが、実際のところミックス犬は「強い」「弱い」などの予測はできません。違う犬種同士の掛け合わせなので確かに遺伝子的疾患のリスクが減りますが、両親犬それぞれによく見られる疾患を発症しないとは限りませんよね。

逆に両親犬から受け継いだ特徴の相性が悪かった場合(例:体は大きいのに骨格は細い)、トータルのバランスが悪く、怪我をしたり、病気につながれば人々からは「弱い」「貧弱」と評価されるでしょう。

「両親犬それぞれに似る」ということは「いいとこ取り」なのではなく、メリットとデメリットどちらも含めて「似る」ということなので、一概に「強い」「弱い」とは決められないのです。

寿命が長いわけではない

いいとこ取りだけではないという内容に繋がりますが、寿命もミックス犬だからこう、純血種だからこう、というのは全く予想ができません。

個体によっても違いますし、育つ生活環境によって変わっていきます。一概に「長い」「短い」と人間は決められません。

ですので、寿命が短いからと批判したり、寿命が長いからと注目するのはどちらも間違っています。

まとめ:ミックス犬に罪はない

ネットで「ミックス犬」と調べると、このような意見や発言が見受けられます。

  • ミックス犬は気持ち悪い、嫌い
  • ミックス犬を飼っていると言ったら嫌な顔をされた
  • 最初は可愛かったのに、成長したらかわいくなくなったからもういらない
  • 血統書のない子はありえない

ミックス犬を生み出している現場は確かに恐ろしく、同じ人間がやっているとは思えないやり方でワンちゃんを扱い、お金儲けをしています。ですが、この意見達はどうでしょう?私たち買い手側や一般人もミックス犬の立場を悪くしていませんか?

勘違いしてはいけないのは「ワンちゃんたちに罪はない」ということです。ミックス犬であれ、純血種であれ、この世に生まれてきた大切な命には変わりありません。ですが、ワンちゃん達は人によって交配をコントロールされているのも事実です。

そして、その交配と販売がワンちゃん達の幸せを思ったものなのか?お金の為を思ったものなのか?そこに大切な分岐点があります。私達一般の飼い主が安くて可愛い子を無闇に求めるのではなく、ワンちゃん達の事をしっかりと考えてあげなくてはなりません。

ワンちゃんをお迎えする機会がある方は、この記事を考えたワンちゃんたちのためにあなたが出来ることをしてあげてください。そしてミックス犬を飼っている飼い主さんはもちろん、ミックス犬が身近にいる方はその子をたくさん可愛がってたくさん大切にしてあげてください。

このような話題は取り扱うのがとても難しく、大きく外に伝えることができません。だからこそ、このような小さな記事で、一人でも多くの人がこの事実に気づき、この課題について考えてくださることは、大きな進展であり、私たちにとってとても喜ばしいことなのです。

最後までご覧いただきありがとうございました。